社長CEOメッセージ

必要とされ続ける存在になる。
強い意志で、次の100年へ。

取締役 代表執行役社長 CEO

「変化とともに変化する」を実践し、次の世代にバトンを渡す

フジシールグループは今年、創立125周年を迎えました。
成長を支えてくださったお客様、パートナーの皆様、株主の皆様に心より感謝申し上げます。また、国内・海外で働く従業員たちと共にお祝いできることにも感謝します。

社内でいつも話していることですが、諸先輩方が礎を築いてくださり、それを受け継いで今のフジシールグループがある。一方で、私たちは何をつくってきただろう、と。次世代に「先輩たちがいたから、今がある」と言ってもらえるようなものがまだまだできていない、という思いをずっと抱いていますし、その気持ちを忘れてはいけないと、肝に銘じています。

次の100年に向けて渡せるもの、残せるものをつくっていくためには、「変化とともに変化する」という行動指針の実践が非常に重要だと考えています。前中期経営計画において「4事業・4地域・4カテゴリーで“プラス1”」という目標を掲げ、実行に移したことは、その一例です。先進国だけでビジネスを展開するのではなく、新しい動きが加速する新興国にも目を向け、インドに進出。また、ハードルの高い医療分野への足がかりを築いたり、包材・生産技術・サービスなどを含めた機械システムを提供したりと、次々に新たな取り組みをスタートさせました。将来的に大きなビジネスにつながるかもしれないチャレンジをする一方で、時代に合わなくなったものは勇気を持って閉じていく。それもまた、次世代のために私たちがやるべきことの一つです。

こうした「変化とともに変化する」の実践には、投資が伴うこともあれば、痛みを伴うこともあります。何もせず現状維持であっても、おそらく数年は大丈夫ですし、恨まれることも、こんなにお金を使って、と怒られることもないのですが、それは問題の先延ばしでしかありません。私たちの姿を見て若い世代が「こういうことをしないといけないんだな」と感じ取ってくれることが、次の10年、20年を変えていく力になればと思っています。

35年以上続く「アイデアバンク」ありたい姿に近づくために

「―包んで〈価値〉を― 日々新たなこころで〈創造〉します。」という経営理念や「変化とともに変化する」という行動指針を体現する施策として私たちが非常に重視しているのが、国内で35年以上続いている「アイデアバンク」です。

創業者である父・藤尾正明が人に関して、こんな言葉を残しています。「絶対にいてほしい人」=自ら課題を見つけて解決していく人。「いてもいなくてもいい人」=すでに見えている課題に対して手を打つ人。「いない方がよい人」=課題があってもまったく手をつけない人。ここからは私の解釈ですが、では、自ら課題を見つけて解決していくことができるのはどういう人かというと、「こうなりたい」という明確なビジョンを持っている人であり、ありたい姿と現状とのギャップが課題としてちゃんと見えている人です。

ありたい姿に近づくために日々の仕事の中から課題を見つけて、解決方法を考えて提案する。その一人ひとりの提案を会社が受け取り、優れた案については責任を持って会社が実行する。これが「アイデアバンク」です。年間約6,000件もの応募があり、その数は全従業員数をしのぐ勢いです。シンプルなことですが、現場を一番よく知っている人たちから出てくるアイデアが多ければ多いほど、経営陣は良い判断ができるものです。これまでは国内だけだったのですが、125周年を機に、海外でも展開することになりました。フジシールグループ全体での「アイデアバンク」の実施は私の念願だったこともあってとてもうれしく思っていますし、これからさまざまな新しい夢が実現していくのではないかと、ワクワクしています。

また、課題を見つけ変わり続けることでより良い会社にしていく、という社風の中で常に求められてきたのが、「仮説提案」です。ビジネスには、「1+1=2」のようなはっきりとした答えはありません。お客様からのご要望にしろ、社内の施策にしろ、いくつかの正解があって、どの答えがベストなのかを探っていかなければならない。同時に、「A案、B案、C案を出しなさい」ということもよく言っています。複数の案を考えることで物事をいろいろな角度から見ることができるし、ディスカッションもできる。もし仕事に明確な正解があるならば、頭の良い人だけがいち早くたどり着き、私たちのような凡人は負けてしまいます。しかし正解のないところがビジネスの面白さであり、フジシールグループでは、何度失敗しても再びチャレンジする姿勢を大切にしています。

経験の積み重ねが必ず自分を助けてくれる

コロナ禍以前は入社式の後に新入社員と昼食をする機会を設けていたので、「学校と会社の違いは何か」という話をよくしていました。学校は自分のために授業料を払い、及第点の60点さえ取れば進級できる。かたや会社は、60点でも80点でもダメ。100点のものでなければお客様は買ってくださらないし、売れなければ給料はもらえません。では、どうすればよいのかというと、60点に達するまで自分の中でじっと抱え込むのではなく、30点や40点の段階でいいので、とにかく早く机の上に出してみる。すると、それをたたき台にして、技術やコストやデザインといったさまざまな観点から、皆が100点に近づけてくれます。それが、「仮説提案」や「A案、B案、C案を出す」という話、ひいては「アイデアバンク」にもつながっていきます。

特に若い従業員には、苦手なことも含めて、いろんな経験をしてほしいですね。自分が得意だと思っていても、上には上がいますから。ビジネスにおいて最終的に一番大切なのは「判断する」ということなのです。前後左右、どの方向に行くのかを決めなければいけない時、それまでに経験したさまざまな成功や失敗が、必ず助けになります。そもそも、少ない経験を基に判断するって非常に怖いことですよね。私もこれからもっと多くの経験を積んでいかなければ、と思っています。

最近では副業を認める会社も少しずつ増えてきているようですが、長引くコロナ禍などの閉塞感を打破するためにも、プロジェクトを掛け持ちするなど、常に複数の仕事に携わることを勧めています。私自身、「はい、この仕事は終わり。次はこれ」というのではなく、いろんなことをパラレルに進めていくのが好きなんです。一見するとバラバラのようでいて実はつながっている、ということが多々あり、可能性がどんどん広がっていきます。プライベートでは、閉塞感を感じると引越しをします。10年も住んでいるとウズウズしてきて(笑)、そろそろ新しい住まいを探さなければ、と。間取りも持ち物も生活環境もがらりと変わるので良い刺激になりますし、私にとってはとても効果的です。

グループ人財の育成と、多様な考え方・生き方の尊重

フジシールグループのもっとも大事な資産は人財です。
「創造を〈夢〉と呼ぶ。創造へのチャレンジを〈勇気〉と呼ぶ。創造のぶつかりあいを〈信頼〉と呼ぶ。」というスローガンのもと、一人ひとりの創造性を育み、成長をサポートする取り組みを推進しています。

1年に2回、自分のやりたい仕事などを書いて上司ではなく人事に直接提出する自己申告制度はもう何十年と続けており、キャリア形成の確認や働きやすい環境づくりに生かしています。また、人財の積極的活用や社内の活性化を目的とした社内公募制度など、自ら手を挙げることができる仕組みも設けています。さらに2018年には「次世代経営者創出プログラム」をスタートさせ、将来の幹部候補となり得る人財を選抜し、重点的に育成しています。2020年に実施したプログラムの一つ「グループ人財プロジェクト」では、選抜メンバーがグループ共通の経営課題に対する解決策を、経営層に向けて提案し、熱い議論を交わしました。その他にも、ベルギーにあるビジネススクールの専門チームと共同で、当社幹部に求める必要なスキルをベースとした、2つのエグゼクティブ・リーダーシップ・プログラムを開発し実施しました。近年はグループ人財の育成という視点での取り組みに力を入れています。人づくりに関しては、何が答えになるのかわからない、というのが正直なところです。それぞれに多様な考え方や生き方があるので、もっともっとできることがあるのではないかと、ずっと思っています。

そんな中、この数年で特に変化を感じるのは、「仕事の位置付け」です。どんどんキャリアを積んでいこうという人と、ほどほどでいいという人と、意識の違いがより顕著になってきたように思います。そのあたりの見極めが本人と会社で一致していればハッピーですが、もし違っているようならどちらにとっても不幸なことになってしまうので、これまでとは違うアプローチが必要かもしれません。また、プライベートを重視していた人が何かのきっかけでやっぱり仕事だと思うこともあるかもしれませんし、これまで仕事一筋だった人が子育てや親の介護などプライベートの環境が変わってスローダウンしていく、ということもあり得ます。そんな一人ひとりの変化を自己申告制度で丁寧にすくい上げ対応できるようになれば、と思っています。

よく言われる仕事と子育ての両立に関しては、どちらかを選ぶのではなく、「女性でも男性でもやりたいことがあれば、欲張って全部やればいい」というのが持論です。私の母親の世代とは違って、今はそれをかなえてくれるシステムやサービスやツールがたくさんあります。お掃除ロボットなんて、私がやるよりずっと丁寧ですから(笑)。便利なものを自分で選んで、どんどん活用すれば良いと思います。

循環型社会の実現に向けて、私たちにできることを着実に

2020年7月から全国でレジ袋の有料化がスタートし、2022年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法)」が施行されました。海洋ごみ問題などに関して、不法投棄という人間の行為よりもプラスチックが悪者にされているようなところがありますが、それは言っても仕方のないことです。軽くて丈夫で加工しやすいプラスチックは腐食しにくく耐熱性など多くの優れた機能を持ち、あらゆる産業や暮らしに不可欠な存在です。そこでフジシールグループでは、循環型社会・持続的社会の実現との両立を目指して、日本ではラベルをラベルに戻す「ラベル to ラベル」に取り組み、米州では新たに開発したRecShrinkTMによってラベルとPETボトルを一緒に回収しPETボトルとして再生する「ラベル to ボトル」を実現しました。

「ラベル to ラベル」は私たちだけでできることではありません。昨年、あるフォーラムで概要を紹介したところ、そうそうたるパートナーが一緒に取り組もうと言ってくださり、アライアンスを結ばせていただきました。その後プロジェクトは順調に進行し、2022年前半から段階的に市場への投入が始まります。パートナーの皆様が異口同音におっしゃっていたのが、「工場で日々一生懸命つくっている製品が世の中にとって悪いモノのように言われる、そんなに悲しいことはない」「作り手が世の中のためになっていると感じることができ、使い手にも喜んでいただけるよう、我々が声を上げなくてはならない」ということ。率先して表に立つことはあまりなかったのですが、 そうして賛同の輪が広がったことで、やはりこれからは積極的に発信していかなければいけないと思いを新たにしました。

現在、ラベルレスのPETボトルが増えつつあり、今後もその市場は拡がると思うのですが、ラベルには大切な役割があります。この商品は誰がつくっているのか、何が入っているのか、消費期限はいつなのか。メーカーの説明責任をラベルが果たしています。そうした安心・安全に関する議論を飛ばして環境に悪いからとにかくやめる、という流れには疑問が残ります。ただ、そうした論調が元に戻ることはないと思うので、私たちができることを着実に、誠実にやっていくしかありません。

リーディングカンパニーの使命を果たし、ステークホルダーの皆様と信頼関係を築く

フジシールグループは1897年に樽栓メーカーとして創業しました。1950年代に業態を変え、現在主力製品となっているシュリンクラベルを開発。リサイクルの機運が高まりをみせた1990年代初頭には、世界初となるミシン目付きラベルを開発しました。タックラベルやソフトパウチも含め、常に時代の変化を先読みした多彩なパッケージを提供し続けていますが、フジシールグループという社名が表に出ることはなく、主役はあくまでお客様であり私たちは脇役に徹することを矜持としてきました。しかし、ビジネスを取り巻く状況が大きく変わった今、私たちが主体となってパートナーの皆様と共にパッケージング業界の活性化を図っていくことがリーディングカンパニーとしての使命であり、「ラベル to ラベル」や「ラベル to ボトル」は、その象徴となるものです。

ただ、お客様が主役であることに変わりはありません。消費者のためにより良い商品をお届けしたいというお客様の声に耳を澄まし、パッケージで何ができるかを考える。そのパッケージは、フィルムやインキなどの材料を提供してくださるパートナーの存在なくしてつくることはできません。買い手よし、売り手よし、世間よし。「三方よし」とよく言われますが、あらゆるステークホルダーとのより良い関係性があってはじめて、私たちも供給責任を果たすことができます。なお、株主の皆様に関しては短期的な売買目的ではなく、中長期で株を持ってくださる方との対話を重視しています。やはり、そういった方々の存在は非常にありがたく、これからも貴重なご意見をお聞かせいただきたいと思います。

次の100年の成長に向けて大切なのは、すべてのステークホルダーに必要とされる企業であり続けることです。そのためには、これまで以上に周りの声をしっかり聞き、迅速にしかるべき手を打ち、積極的に発信していかなくてはなりません。皆様から必要とされる存在になる、という強い意志を持ち続けることが、時に賛同していただいたり、困った時、しんどい時には手助けしていただいたり、という信頼関係にもつながっていくのだと思います。