気候変動に関する取り組み

気候関連問題のガバナンス

FSI取締役会は、気候関連問題を含むサステナビリティ課題について、年4回以上の頻度で審議しており、目標の承認や進捗状況の確認を実施しています。具体的には、2021年に気候変動、海洋プラ問題、資源枯渇に対するリスクと機会を考慮して、取締役会により新中期経営計画が審議・策定され、環境配慮型製品の売上比率向上、CO2排出削減、廃棄物削減を含む新環境KPIが決定されました。これらの目標・リスク管理に係る取組について、取締役会の開催ごとに進捗の確認・指導・監督を行っています。

地域(日本、米国、ヨーロッパ、ASEAN)を担当する執行役は、気候変動のリスクと機会の評価をふまえて、環境問題対する取り組みを含む事業全体の責任を負っており、事業部門の執行役は、同様の観点をふまえて製造プロセスにおける環境への影響低減を促進する責任を負っています。開発担当執行役は、気候関連のリスクと機会の評価および管理の両方の観点から、年4回開発会議を主催し、環境への影響の低減に寄与する製品の開発を積極的に促進するとともに、それらを監視する責任を負っています。

さらに当社は、当社執行役に対し、「業績連動報酬」を導入しております。報酬総額に占める比率は0%~30%程度の範囲で変動し、算定項目には単年度の連結売上高、営業利益率や、経営戦略上重要な財務指標のほか、環境指標や人財育成などの非財務指標も含まれます。

また、新設した「グループサステナビリティ委員会」では、取締役会に対する具体的な対応方針の提案に加え、取締役会で決定された事項の各地域・事業に対する通達・指示や、各地域での活動内容の評価・支援・促進を行います。

気候関連問題のついての戦略とリスク管理
気候関連のリスクと機会の管理プロセス

フジシールグループでは以下の管理プロセスを用いて事業のリスクと機会を特定しています。
フジシールグループ独自の「リスクマップ」手法やシナリオ分析などを用いて、気候関連のリスクと機会の評価を定期的に実施しています。

リスク管理プロセスの説明:
  1. (1)考えられる各リスクの影響の程度と発生の可能性を評価してリスクマップを作成し、それらの重要性を視覚化。
  2. (2)短期、中期、および長期にわたる経営陣への各リスク項目の影響と発生を推定。 次に、最も重要なリスク項目を特定し、リスク評価の一環としてそれらの優先順位の決定。
  3. (3)完成したリスクマップは、各年度の初めに取締役会で検討・承認され、各部門・地域が承認されたリスクマップに基づいて自らのリスクを管理するための対策を策定・実施。
機会管理プロセスの説明:
  1. (1)毎年度末に、各地域の研究開発メンバーが参加するグローバル開発会議で、各機会の影響と行動の実現可能性をレビューし、顧客/市場のニーズと技術的課題に基づいて主要な機会項目を特定。
  2. (2)特定された主要な機会項目は、取締役会によってレビューされ、グローバル開発プロジェクトとして承認。
  3. (3)残りの開発提案は、地域開発プロジェクトとして関連する地域開発部門によって処理。
シナリオ分析

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環境省のガイドラインに従い、2℃シナリオにと4℃シナリオを想定し、経営企画・財務など関係部署が共同で事業への影響度を分析しました。また、新たに1.5℃シナリオでのパラメータを用いて、2℃シナリオと置き換えた場合も想定しています。
その結果、温室効果ガス(GHG)排出量削減の重要性が高まり、さらに包装業界に深く関わるプラスチックごみ問題やラベルレス化が顕在化してくると予想しています。対策として、省エネ対策の積み重ねによるGHG排出量削減と並行して、主に印刷での有機溶剤使用量を低減、さらに水性化を図るなど、より踏み込んだ環境負荷低減策が必要であると考えています。またGHG排出量削減を進める設備投資や再生可能エネルギーの導入を促進するため、内部炭素価格の仕組みを活用しています。

特定されたリスクと機会の例
長期リスク:新たな炭素課税による支出増大
フジシールグループの事業は、新たな規制に関連する法律の改正や廃止、またはそれらの法律に関する規制当局の執行方針の変更によって影響を受ける可能性を認識しています。
新たに炭素税が導入された場合、2021年排出量を元に算定すると2℃シナリオでは年間7~16億円、1.5℃シナリオでは年間28-51億円の追加支出が見込まれることから、事業に影響を与える可能性があります。
中期リスク:非財務情報開示不足によるレピュテーション低下
気候変動問題を含む環境問題の増大による評判、風評被害へのリスクは特定されているリスクの1つです。
世界の機関投資家及び株主のESG投資への関⼼が高まっており、気候変動への対策が遅れると企業価値の低下を招く可能性があります。
短期リスク:異常気象による被災・供給不能
近年、気候変動により台風や豪雨などの異常気象が増加しています。
特に、豪雨被害の多い日本では、グループ全体の売上高の約60%を占め、名張、筑波、結城、山形、宇部、兵庫と6つの工場を運営し、さまざまな顧客と協力会社を抱えています。これらの地域では気候変動などによる台風や豪雨といった異常気象によって建屋や製品さらには従業員などが被災するリスクがあります。
機会1:低GHG排出に寄与する輸送効率の良い製品の開発・提供によるリソースの効率化
フジシールグループでは、コストを抑え、環境負荷を低減するために様々な面で廃棄物の削減、輸送の効率化によるCO2排出の削減に取り組んでいます。特にフジシールグループおよびお客様の生産と納品の観点から、より効率的な輸送システムの開発などに取り組んできました。このような開発は、気候変動に関連した機会の1つとして認識しています。
機会2:包材と機械のシステムソリューションの開発・提供による低炭素製品需要への対応
フジシールグループでは環境負荷を低減するよう、パッケージを通じて地球に優しい開発を進めております。CO2排出量の少ない製品として、薄肉ラベルやバイオマス原料、再生樹脂を用いたラベルやパッケージならびにそれらに最適なパッケージング機械の開発を行っています。さらには、パッケージング機械の生産効率・エネルギー効率の向上も進めており、機械と包材の両⽅においてCO2排出量削減を行うことで、低炭素製品需要に応えることを機会の一つと考えています。
機会3:低炭素社会実現のためのリサイクル関連取組みによる新市場開拓
フジシールグループでは、技術やマーケットの情報交換を通じて、品質および⽣産性の向上、新製品の開発と新市場の開拓に努めております。近年では気候変動に関連した問題として製品の持続可能性について多くの顧客で検討が始められております。
そうした状況の中フジシールグループでは、再生可能設計製品や関連するサービスによる新市場開拓を機会の一つとして考えております。すでに、製品のリサイクルへ向けた取り組みとしてペットボトルへリサイクル可能なシュリンクラベルの開発(RecShrinkTM)に2019年9月、フジシールグループの米国子会社であるAmerican Fuji Seal Incが成功しました。
気候変動に関する全社目標

フジシールグループでは、気候変動を重要な環境課題の一つとして捉え、全社として中期目標を定めています。段階的な目標の見直しを行いながら、2050年GHG排出量実質ゼロを目指します。

GHG排出量売上高原単位(Scope1+2):2017年 対比6%削減(目標年2023年)
進捗状況
2021年度 GHG排出量の推移

フジシールグループの国内外の主な生産拠点における2021年度のスコープ1・2の温室効果ガス排出量売上高原単位は0.94 t・CO2/百万円となっており、2017年度実績と比較して3.2%増加しま した。
2019年度は全リージョンにて2017年度比合計8,294tのCO2を削減することができ、原単位としても2017年度比5.7%削減することができました。しかし2020~2021年度は各リージョン個別では原単位で10%以上削減できているものの2020年度から算定方法(バウンダリ等)の変更により原単位の高い地域の寄与が増えたため、結果として増加しました。
また、当社では2050年ネットゼロ目標を新たに掲げ、達成を目指し段階的に目標をあげていくことを計画しています、2050年の達成に向けてこれらかも削減活動を実施していきます。

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フジシールグループでは、開示する GHG排出量ならびにエネルギー消費量の一貫性・透明性・正確性を確保する ため、2019年度報告分から、SGSジャパン株式会社による第三者検証を受けています。

GHG排出量第三者検証
検証基準
ISO14064-3:2006
検証の対象と範囲

Scope1.2(エネルギー起源GHG排出量)及びエネルギー消費量
フジシールグループ29拠点
(国内全16拠点、海外13拠点)

Scope3(カテゴリー6:出張)
組織及び連結会社

検証結果
算定および報告されていないと認められる重要な事項は発見されなかった。

検証意見書

取り組み例

近年のGHG削減の具体的な取り組みとして各地で行っているものを以下にご紹介します

タイ工場での設備更新
タイ工場にて2台の新しいMagnetic bearing chillerを設置しました。これにより従来の古い設備から電気の使用量を大きく削減する事ができエネルギー使用を抑えることができました。
排ガスヘッダ改造
VOC燃焼装置のVOCガス供給ヘッダを改造したことで燃焼効率が改善し、温度を上昇させるのに使う都市ガスの使用量が減ったことでCO2排出を削減することが出来ました。これまでは、それぞれのVOC燃焼装置に固定された供給ルートにて印刷機から排出されるVOCを燃焼装置よって焼却していました。この供給ルートを共通化することで、VOCの濃度管理が容易になり効率的に燃焼を制御する事ができるようになりました。
新方式印刷乾燥機設置
印刷設備の設計改善により、乾燥に必要な風量を下げることが可能となりました。また、乾燥BOXの断熱性能を上げることでさらに電気使用量を削減することができました。

これらの取り組みの他にも、米州では再生可能エネルギーの導入を積極的に行っており2022年よりRECsの購入を開始しています。また、アセアンでは新規に太陽光パネルの設置も実施しておりGHG排出削減に向けた取り組みを今後とも紹介していきます。