トレーサビリティシステムとは?「デジタル指紋」を使用した最新のトレース技術も解説
トレーサビリティシステムとは?「デジタル指紋」を使用した最新のトレース技術も解説

トレーサビリティシステムとは製品・サービスの流通過程や生産過程を追跡し、情報を管理するシステムです。近年、偽造品や不正転売品が増加傾向にあるため、トレーサビリティシステムの重要性が高まっています。
しかし、トレーサビリティシステムという言葉自体は聞いたことがあるものの、できることや導入のメリットなどがよく分からないという声も多く聞かれます。
本記事ではトレーサビリティシステムの概要、できること、導入のメリットと課題を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
01トレーサビリティシステムとは

製品やサービスの流通および生産過程を追跡し、その情報を管理するためのシステムをトレーサビリティシステムと呼びます。企業は製品やサービスの提供に伴い、原材料の調達から製品の製造・流通・販売にいたるまでの全ての段階において、詳細なデータの記録・管理が求められます。トレーサビリティシステムを導入することで、企業は製品の品質や安全性を確保し、消費者に対し透明性を提供することが可能です。
特に、トレーサビリティシステムは食品や医薬品、化粧品など、品質や安全性が厳しく求められる業界で重要な役割を果たしています。例えば、食品業界では消費者が購入した製品の原材料がどのように生産されたのか、どのように流通しているのかを確認できることが求められます。トレーサビリティシステムによって生産や流通などの過程を確認できる体制の構築により、不具合やリコールが発生した際に迅速かつ効率的に問題のある製品を特定し、対応することが可能です。
トレーサビリティの重要性が高まっている背景
トレーサビリティの重要性が高まっている背景には、偽造品や不正転売品が海外で増加傾向にあることが挙げられます。
偽造品や不正転売品の流通が増えることにより、ブランド毀損や売上低下のリスクが高まります。そうしたリスクに対応するため、自社製品の管理の確実性を高め、品質を保証する手段としてトレーサビリティの重要性が高まっています。
02トレーサビリティシステムでできること
トレーサビリティシステムによって製品の追跡や遡及、原材料や製造工程の管理が可能になります。具体的には以下の通りです。
製品の追跡・遡及
システムの導入により、原材料や部品から製品の追跡を行う追跡(トレースフォワード)、製品から原材料や部品の追跡を行う遡及(トレースバック)の対応が可能になります。
不具合が見つかり、製品の回収が必要となった場合、回収範囲の特定が可能になり、迅速に対処できるようになります。また、問題が発生した場合には製品工程をさかのぼり、問題の特定および対処を迅速に行います。
原材料や製造工程の管理
原材料・ロット・期限に分けて在庫管理を行うことも可能です。加えて、以下の情報などと紐づけて管理することで、原材料の入荷から製品の出荷までの追跡が可能になります。
- 製造日時
- 条件
- 品質検査
また、製造指示に対して、使用した「日時・担当者・具体的な内容や量」を確認したり、製造出来高を入力し在庫を管理できたり、といった対応が可能です。
03トレーサビリティシステム導入のメリット

トレーサビリティシステムの導入により、流通過程のリスク管理強化につながります。不具合品の流通を防ぎ、品質の向上も期待できるでしょう。
また、生産管理や品質管理に発生していたコストや労働時間の削減も可能です。
流通過程のリスク管理強化
トレーサビリティシステムにより、製品がどのように流通したのかを正確に把握できます。万が一品質に問題が発生した場合も迅速に回収できるでしょう。
また、配送ルートの明確化は品質保証や真贋判定に役に立ち、消費者に対し「安全性・信頼性の高い製品」というイメージを提供できるでしょう。
品質の向上
製造工程で不具合品が製造されてしまった場合でも、識別番号の追跡により、迅速に問題を見つけ出し、解決に導きます。
不具合品の流通を抑え、歩留まりの向上や品質向上が期待できるでしょう。
コストダウンや労働時間の短縮
システムに蓄積したデータを基に、生産管理や品質管理の業務を効率的に行えるようになります。
入出庫や移動、棚卸し、廃棄作業の記録を残すことで、リアルタイムの在庫管理が可能になり、無駄が生じている工程の見直しが可能です。
工程の見直しにより、生産性の向上とコスト削減につながります。
顧客信頼とブランドイメージの強化
トレーサビリティシステムの導入によって製品のサプライチェーン全体を顧客に透明に示せるようになり、製品の安全性や品質に対する信頼を高めます。
リアルタイムで生産地や製造日などの製品情報を提供し、顧客の安心感を醸成し、ブランドイメージの向上が期待できる点も導入のメリットです。
04トレースする範囲の違い
トレーサビリティシステムは目的によって最適なシステムが変わります。
製品の各段階における、どの範囲をトレースしたいのかによって選択すべきシステムが変わってくるため、まずは導入の目的を明確にしましょう。
上流~下流まで:チェーントレーサビリティシステム
原材料の調達から製造、流通、販売、消費者に至るまでの各段階を追跡する場合、チェーントレーサビリティシステムが適しています。
製品がどのように流通しているかを把握できるチェーントレーサビリティシステムは、以下のような目的で導入されるケースがあります。
- 品質管理や安全性確保を行いたい
- 偽造品や不良品の発見、リコール時の迅速な対応を可能にしたい
社内に特化:内部トレーサビリティシステム
製品プロセスや在庫管理、製品の品質管理に関連する情報を追跡する場合、内部トレーサビリティシステムがおすすめです。
内部トレーサビリティシステムは内部の運用効率を向上し、製造過程や品質管理の制度を高めることなどを目的として導入されるケースがあります。
05トレース技術の違い
上記の流れでトレースをすることで、不正転売元の特定を進めることが可能です。
しかし、不正転売品は特定を逃れるために、2次元コードやRFIDのような識別情報を切り取って出品しているケースも珍しくありません。
そういった場合、2次元コードやRFIDのような識別情報に頼らずにトレースできる仕組みの整備が必要です。
トレースに使用する情報伝達媒体の種類

トレースに使用する情報伝達媒体の種類は2次元コードやRFIDの他にブロックチェーンなどの技術があります。ラベルを印字するバーコードや非接触で一括読み取り可能なRFIDが多く使用されています。
情報伝達媒体の代表的な種類のメリットおよび注意点を以下の表にまとめました。
情報伝達媒体 | メリット | 注意点 |
---|---|---|
バーコード・2次元コード | スキャンで情報を取得するため、低コストで導入しやすい | 情報量が限られる |
RFID | 複数タグを一括で読み取り可能 | コストが高い |
ブロックチェーン | セキュリティ性および透明性が高い | 導入と運用が複雑 |
ステルス個体識別 | 印刷ムラで識別するため、ラベルや印字が不要 | 認知度の低さが、導入の障壁になる |
2次元コードやRFIDの脆弱性とは
2次元コードやRFIDはコストや利便性の点からトレーサビリティの識別技術として広く浸透しているものの、「可視コード」ならではの脆弱性があります。
近年、偽造品や不正転売品が増加傾向にあります。
それらの流通元や経路を特定する上では、識別情報を使ったトレースを行う必要がありますが、2次元コードやRFIDではトレースができなくなる可能性があります。
不正転売者は流通元の特定を回避するために可視コード自体を切り取ることがあります。また、偽造品は製品だけでなく可視コード自体も複製するケースがあるため、RFIDや2次元コードなどの「可視コード」の管理では、不正転売品や偽造品のトレースまではできなくなる可能性があります。
ステルス個体識別認識技術により、2次元コードやRFIDの信頼性を強化

近年登場した「デジタル指紋」を読み取るステルス個体識別技術は可視コードの脆弱性を解決できる技術です。
ステルス個体識別技術は自然発生的に発現する印刷のわずかなムラを識別します。同じデザインを印刷したパッケージであっても、人の目では識別が不可能なレベルで自然発生的に発現する印刷のわずかなムラがあります。
そうした印刷のムラは指紋のように1つとして同じものはありません。そのため、印刷のムラを撮像し識別することで、製品1つ1つの違いを識別できます。
ステルス個体識別技術の活用により2次元コードやRFIDなどの可視コードを使用せず、製品情報の管理が可能です。
また、従来まで使用していた2次元コードやRFIDに加え、ステルス個体識別技術で「デジタル指紋」でも管理することで、コードを切り取られた場合や複製した場合であっても、トレーサビリティは担保されます。
06トレーサビリティシステム導入時の課題
トレーサビリティシステムを導入する場合、システムのコストや維持費がかかったり、現場のサポートが必要になったり、といった課題が生じます。また、現場の業務フローによって適切なシステムが変わります。
導入時の課題を把握し、業務フローに適したシステムを選ぶことが重要です。
システムのコストや維持費がかかる
トレーサビリティシステムの導入には初期費用に加え、維持費や更新費用がかかるため、費用対効果を十分に見極める必要があります。
クラウドサービスの利用や段階的導入により、コストを抑える方法も検討しましょう。
現場の業務フローに適したシステムを選ぶ
トレーサビリティシステムを効果的に導入するためには、現場の業務フローに適しているシステムを選定することが重要です。
現場の運用と合致しないシステムでは効果が十分に発揮されないため、事前に業務内容や手順を把握し、現場の実態に合うシステムを慎重に選ぶ必要があります。
導入にあたり現場のサポートが必要になる
高度なトレーサビリティシステムを導入する場合、導入からスムーズな運用まで厚いサポート体制が必要になる可能性もあります。
しかし、使い勝手の良いシステムであれば、現場の使用者への教育やサポートを大幅に省けるため、システム選定時には現場の操作性や使いやすさも十分に考慮することが重要です。
07ステルス個体識別技術を活用したトレーサビリティシステムとは
”Deep IS® システム”でトレーサビリティの信頼性強化を実現
フジシールインターナショナルはステルス個体識別技術を活用したトレーサビリティシステムの”Deep IS® システム”を提供しています。
Deep IS® システムは印刷のわずかなムラを識別できるため、2次元コードやRFIDといったコードを使用しなくても製品ごとの個体識別が可能になります。
そのため、2次元コードやRFIDといった可視コードを使用できなくなった場合でもトレースができるようになるため、偽造品や不正転売品の流通元の特定にも効果的です。

マイクロスコープとPCで導入でき、扱いやすい操作性を実現
”Deep IS® システム”はパッケージを撮像するマイクロスコープと、製品情報を管理するパソコンがあれば容易に導入できます。
扱いやすい操作性を実現したため、現場の使用者への教育などを大幅に削減できるでしょう。
また、大ロット製品の場合、個体識別済みラベルを貼り付けることで、従来のパッケージを個体識別済みパッケージに変更できます。
トレーサビリティの精度向上も実現
自社ラインに”Deep IS® システム”を導入する場合、mm秒でタイムスタンプが付与されるため、ラインの箇所と製品の状態をより詳細に取得可能です。
そのため、従来の方法では難しかった細かいラインの管理や異常発生時の対象製品をより正確に特定できるようになります。
Deep IS® システムにご興味のある方へ
”Deep IS® コネクトシステム”の導入事例や製品の詳細については以下のサービスで詳しくご紹介していますので、ご興味のある方はご覧ください。
Deep IS® はフジシールグループの商標または登録商標です。