RFIDチップとは?特徴・使用例とセキュリティ性を高める使い方について解説
RFIDチップとは?特徴・使用例とセキュリティ性を高める使い方について解説

RFIDとはRFIDタグに情報を記録し、無線通信により情報を読み取ったり、書き換えたりできるシステムです。さまざまな業界に導入されているものの、近年の不正転売品や偽造品の流通といったリスクには対応できなくなる可能性があります。本記事ではRFIDの概要に触れながら、RFIDの弱みも解説します。また、RFIDの弱みをカバーできるシステムも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
01RFIDとは
RFIDとは情報の記録、読み取り、書き換えができるシステムです。商品の在庫管理や偽造品対策などさまざまな用途で活用されています。
ここでは、RFIDの特徴や使用例などをみていきましょう。
RFIDとは

RFID(Radio Frequency Identification)は、無線通信により情報を記録したRFIDタグの情報の読み取りや書き換えを可能にします。
RFID以下の3つによって構成されています。
- RFIDリーダー:RFIDタグに電波を照射し通信する装置
- RFIDタグ:情報を記録したICチップとアンテナを守る保護素材を組み合わせたタグ
- 処理システム:在庫管理システムやPOSレジなど、記録した情報を使うシステム
RFIDタグとは
RFIDタグとは情報を記録したICチップと通信用アンテナを組み合わせたタグです。
似たようなシステムにバーコードや2次元コードがあり、データを読み取る方法が異なります。違いは以下の通りです。
- バーコードや2次元コード:光学的に読み取る
- RFIDタグ:無線通信により非光学的に読み取る
ダンボールへの貼り付けや流通用パレットへの内蔵など、さまざまなタイプが存在しています。使用用途も多岐に渡ることから「RFIDタグ」をはじめ、「電子タグ」「無線タグ」などさまざまな名称で呼ばれています。
RFIDの特徴
RFIDの特徴は以下の4つが挙げられます。
- 遠隔でも読み取り可能
- 複数のタグを一括で読み取れる
- 汚れによる読み取り不良は発生しない
- 大容量で書き換え可能
無線通信の利用により、遠隔でも情報の読み取りが可能です。860~960Mhzの超短波帯(UHF帯)の場合、手の届かないような最大で数メートル離れた場所でも読み取り操作を行えます。加えて、包装を開けないまま、汚れが付着したまま、といった状態でも読み取り操作が可能です。
バーコードや2次元コードと異なり、複数のタグを一括で同時に読み取ることが可能です。バーコードや2次元コードの読み取りは1点ずつに限られています。情報を読み取る対象が増えるほど、作業工数が増加します。一方でRFIDは複数タグの一括読み取りが可能なため、効率的に作業を進めることが可能です。また、特定のタグのみを読み取るRFIDリーダーも存在しているため、業務内容に適したものを導入できます。
RFIDはICチップに書き込まれた情報を読み取るため、タグ自体に汚れが付着していても読み取りに影響を及ぼしません。一方でバーコードや2次元コードは表面に汚れが付着すると情報の読み取りができないため、RFIDの方が汚れに強いという特徴があります。
バーコードや2次元コードと比較すると、RFIDタグの方がより大容量の情報を記録できます。加えて、バーコードや2次元は内容の変更に対応できない一方でRFIDはRFIDリーダーの使用により情報の書き換えが可能な点も特徴の1つです。
RFIDの使用例

RFIDはさまざまな業界で導入されています。ここでは、化粧品メーカー、健康食品メーカー、スポーツ用品メーカーでの使用例をみていきましょう。
【化粧品メーカー】
化粧品メーカーでは化粧品の製造や流通過程で導入し、原材料のトラッキングおよび製品の在庫管理を行っています。RFIDタグの使用により、容易に製品を追跡できるようになり、偽造品対策や在庫管理の効率化を図ることが可能です。店舗にも活用し、商品の在庫状況をリアルタイムで把握できます。
【健康食品メーカー】
健康食品の製造ラインに導入し、各製品のトレーサビリティの強化を行っています。RFIDタグを製品に取り付け、製造から出荷までの各工程を正確に追跡できるようになり、品質管理やリコール対応の迅速化につながるでしょう。
【スポーツ用品メーカー】
スポーツ用品の在庫管理や流通プロセスに導入し、商品の追跡および管理を効率的に行います。RFIDタグを製品に貼り付け、在庫状況の把握や出荷準備をリアルタイムで迅速に対応可能です。
構造と仕組み
RFIDの構造は以下の3つの要素で構成されています。
- ICチップ:情報を記録する
- アンテナ:データの送受信を担う
- 保護素材:ICチップとアンテナを守る
RFIDが情報を読み取る手順は以下の通りです。
- 1RFIDリーダーからRFIDタグへ電波の照射を行う
- 2アンテナが電波を受信し、ICチップの起動がスタートする
- 3記録された情報が送信される
- 4受信した情報を処理システムに送信しデータ処理を実行する
02タグの種類

RFIDタグはさまざまな種類が存在しており、「バッテリー搭載」「周波数」「用途」による分類に大きく分けられます。
バッテリー搭載による分類
バッテリーの搭載の有無により、パッシブタグ・アクティブタグ・セミアクティブタグの3種類に分けられます。
【パッシブタグ】
タグにバッテリーが内蔵されておらず、RFIDリーダーから受信した電波によりICチップが動作するタイプです。サイズを抑えやすく、メンテナンスの必要がありません。物流やアパレル業界の現場で在庫管理などを目的として導入されます。
【アクティブタグ】
ICチップ内にバッテリーを搭載しているタイプです。パッシブタグと比べると、大きなサイズで高額になる傾向があります。温度センサーを内蔵した鮮度管理や大規模な倉庫での在庫管理などで活用されるケースがあります。
【セミアクティブタグ】
パッシブタグとして機能し、電波受信時に内蔵バッテリーが駆動するタイプです。不要な時には駆動しないため、誤検知の少なさが利点です。企業の入退室管理やレースのタイム計測などに導入されます。
周波数による分類
周波数は以下の4つに分けられます。
周波数の種類 | 特徴 | |
---|---|---|
電磁誘導 | LF帯 (周波数135KHz以下) |
|
HF帯 (周波数13.56Mhz) |
|
|
電波利用 | UHF帯 (周波数860~960Mhz) |
|
マイクロ波 (周波数2.45GHz) |
|
用途ごとの分類
RFIDタグはラベルタグと特殊タグの2種類に分けられます。
ラベルタグはシール状に加工されたタイプのタグで製品パッケージに貼り付けできるタイプです。一般的に「ラベル」とも呼ばれます。
低価格でプリンタにより情報を書き込めるため、幅広い用途で導入されています。
ただし、防水性や耐衝撃性が弱い点、金属に貼り付けると読み取れない点には注意しなければなりません。
特殊タグは貼り付ける対象が金属製品でも情報を読み取れるタイプです。防水性および耐熱性に優れており、機能性の高い特徴があります。
ラベルタグと比較すると高額になるものの、通常のラベルタグでは対応できない用途でも導入可能です。
03RFIDや2次元コードの弱みとは
製品の管理を行うRFIDと類似しているものとして、2次元コードが存在しています。
RFIDには複数の情報をまとめて読み取れる、2次元コードには低価格で導入できるといったメリットがあります。
しかし、近年はRFIDや2次元コードによる適切な製品管理を妨げるリスクが高まっています。
不正転売品や偽造品の増加

近年、ECサイトの拡大により、不正転売品や偽造品の流通量が増加しています。こうした非正規品の流通量増加は、従来までのRFIDや2次元コードを使用した管理方法を揺るがす事態となっています。
不正転売品や偽造品は、企業の売上低下やブランド毀損のリスクをもたらします。例えば、正規とは異なるルートで、安く不正転売されることにより、正規品の売上低下が懸念されます。また消費者が誤って偽造品を購入した場合、偽造品の品質に対するクレームなどが発生し、ブランドや企業イメージの悪化が懸念されます。
このようにして、不正転売品や偽造品が増加することは、正規品が購入されなくなることや、企業イメージの低下など様々なリスクがあります。そのためこうした非正規品を撲滅するために、流通元の特定といった対策を進める必要があります。
不正転売品や偽造品の流通元特定に使用できない

しかし、RFIDや2次元コードなどの「可視コード」では流通元特定ができない可能性があります。
不正転売者は流通元の特定を回避するために可視コード自体を切り取ることがあります。また、偽造品は製品だけでなく可視コード自体も複製するケースがあるため、RFIDや2次元コードなどの「可視コード」の管理では、不正転売品や偽造品のトレースまではできなくなる可能性が高いです。
不正転売品や偽造品の流通元特定を行うには
RFIDや2次元コードなどの「可視コード」で特定をできない場合、どのようにすればよいのでしょうか。

「デジタル指紋」を読み取るステルス個体識別技術であれば、そうした問題を解決できます。
ステルス個体識別技術は自然発生的に発現する印刷のわずかなムラを識別する技術です。
同じデザインを印刷したパッケージであっても、パッケージには人の目では識別が不可能なレベルで自然発生的に発現する印刷のわずかなムラがあります。
印刷のムラは指紋のように1つとして同じ模様はありません。印刷のムラを撮像し識別することによって、製品1つ1つの違いの識別が可能です。
ステルス個体識別技術の活用により、RFIDや2次元コードなどの「可視コード」に頼らず、製品情報の管理が可能になります。
RFIDや2次元コードに加えて、ステルス個体識別技術で「デジタル指紋」でも管理を行うことで、不正転売者にコードを切り取られたり、偽造品流通者にコードを複製されたりしても、トレーサビリティは担保されます。
04「デジタル指紋」による識別により、RFIDの信頼性を向上
”Deep IS® システム”でトレーサビリティの信頼性強化を実現
フジシールインターナショナルはステルス個体識別技術を活用したトレーサビリティシステムの”Deep IS® システム”を提供しています。
”Deep IS® システム”は印刷のわずかなムラを識別できるため、RFIDや2次元コードといった可視コードを使用しなくても製品ごとの個体識別が可能になります。
そのため、RFIDや2次元コードといった可視コードを使用できなくなった場合でもトレースを行えるため、不正転売品や偽造品の流通元特定に役立ちます。

マイクロスコープとPCで導入でき、扱いやすい操作性を実現
”Deep IS® システム”はパッケージを撮像するマイクロスコープと製品情報を管理するパソコンがあれば容易に導入できます。
大ロット製品の場合、個体識別登録済みのラベルの供給も可能です。ラベルの貼り付けにより、従来のパッケージを個体識別済みパッケージに書き換えることも可能です。
RFIDや2次元コードと共存する事でより強固なセキュリティを実現
”Deep IS® システム”はRFIDや2次元コードとの共存により、より強固なセキュリティシステムを実現します。すでにヨーロッパの切手にも採用されており、2次元コード自体を個体識別することで2次元コードの情報力を活かしつつ、コード自体の複製を検知できます。
また、”Deep IS® コネクトシステム”によってRFIDの個体情報とリンクすることで、RFIDが取り除かれてもデジタル情報が共有されトレーサビリティを維持できます。
Deep IS® システムにご興味のある方へ
”Deep IS® コネクトシステム”の導入事例や製品の詳細については以下のサービスで詳しくご紹介していますので、ご興味のある方はご覧ください。
Deep IS® はフジシールグループの商標または登録商標です。